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☆貸借対象表上の有価証券と投資有価証券の違いとは?
有価証券は会社法、刑法、税法、金融商品取引法などによりそれぞれ定義されており、数多くの種類がありますが、一般の事業会社にとって通常対象となる有価証券は、金融商品取引法に規定されている株式、国債、社債、投資信託などだと思われます。
会計ルールでは、有価証券の種類によらず、会社が有価証券を「保有する目的」によって4つに区分しています。株式などの有価証券を短期的な資金運用によってキャピタルゲインなどの運用益を目的として保有する場合は「売買目的有価証券」になります。国債や社債など満期が設定されている有価証券を満期まで保有することで投資元本と利息を目的とする場合は、「満期保有目的の債券」に区分されます。支配力や影響力を行使する目的で会社の株式を保有する場合は「子会社・関連会社株式」に該当します。その他の目的で株式などの有価証券を保有する場合は、「その他有価証券」に区分されます。そして、これらの有価証券の区分ごとにB/Sでの記載が異なります。
☆投資有価証券から有価証券への区分変更?
ある会社が保有する「その他有価証券」(投資有価証券)の一部について、資金繰りのため近い将来売却することを決定しました。この場合、将来売却を予定している投資有価証券は、「売買目的有価証券」として流動資産の「有価証券」に振替えることになりますか。それとも投資有価証券のままの会計処理及び表示を継続することになりますか。なお、当社は有価証券の売買を頻繁には行ってはいません。
この場合は以下のようになると考えられます。
①、流動資産の「有価証券」として表示される「売買目的有価証券」は、短期間の価格変動により利益を得ることを目的として保有し、通常は同一銘柄に対して相当程度の反復的な購入と売却が行われるものをいうとされています(金融商品会計実務指針第65項)。
したがって、売買目的有価証券とは、いわゆる有価証券の売買を業として行うトレーデイング目的の有価証券を指すことになります。
②、本件の場合、資金繰りのため近い将来売却することを決定したとしても売買目的有価証券には該当しないことになりますので、流動資産の有価証券には振替ることはできないものと考えられます。また、「その他有価証券」への分類はその取得当初の意図に基づいて行われるところから、トレーデイング取引を開始することとした場合等を除いて、取得後における売買目的有価証券への振替は認められないことになっています(金融商品会計実務指針第86項)。
③.したがって、本件の場合には、その他有価証券としての従来からの会計処理及び表示をそのまま継続することになるものと考えられます(金融商品会計Q&AQ20)。